続いて、今度はFW陣について。こちらはDF陣よりも、ある意味もっと深刻な状況だと思います。
まずは、昨シーズンまでの陣容から。
システムは4-2-3-1で、両ボランチにハヴィエル・コルテスとアレハンドロ・カストロ、トップ下にチームのエースであるイスマエル・ソーサ、もう一人の点取り屋マティアス・ブリトス、そしてそれまではフィデル・マルティネスが入っていた左サイドのレギュラーポジションを奪った形のルイス・キニョネス。1TOPにエドワルド・エレラ。
具体的な例として、メキシコリーグ2016年後期 第6節 Dorados 2-3 UNAMを挙げてみます。
先制点は、前半5分左サイドを抜け出したルイス・キニョネスの逸れたセンタリングがヘスス・チャベスがオウンゴール。マティアス・ブリトスが、それをダメ押しでゴールラインを超える前に押し込む形となった。
追加点はその10分後、同じくルイス・キニョネスが個人技で再びPUMASのリードを拡げる、シーズン初得点をマーク。ちなみに、この時期PUMASはリベルタドーレス杯も同時に戦っていたためローテーションを使用していた。
対する、今シーズンの陣容について。
システムは同じく4-2-3-1で、両ボランチにハヴィエル・コルテスとアブラハム・ゴンザレス、トップ下にヘスス・ガジャルド、パブロ・バレラとマティアス・ブリトス、1TOPにエドワルド・エレラ。ここで昨シーズンと大きく違うのが、両サイドバックによる崩し。メキシコ1部リーグでもバリバリの一線級であった二人に対して、今シーズンは下部組織出身選手であるガジャルドと昨シーズンまでモンテレイの控えでしかなかったパブロ・バレラである。
上記同様の対戦(2部リーグから昇格したばかりのチームとアウェイ)という意味で、メキシコリーグ2016年前期 第4節 NECAXA 2-2 UNAMを挙げてみます。
決定的に違うのが、先制点。一番やってはいけないゴールを、PKで献上。前半35分ハヴィエル・コルテス、パブロ・バレラ、マルセロ・アラトーレらが作ったトライアングルからのセンタリングにエドワルド・エレラがヘディングシュートで何とか同点。
しかし溜息を下げたのも束の間、後半開始早々相手に勝ち越し点を与えてしまう。試合後半、監督はエドワルド・エレラに代えてサウル・ベルホンをピッチに送り込み打開を図るもこれで終わりかと思われた、後半41分フィデル・マルティネスがペナルティエリア内に侵入したパブロ・バレラにセンタリングを上げ、強力なボレーシュートをゴール右隅に放ち何とかドローに持ち込んだ。
決定的に違う理由の一つは、サイドにおける崩し。相手は2部リーグから昇格したばかりのチーム。アウェイとはいえ、最低でも勝ち点は挙げて当然の相手。左サイドについては1年前はフィデル・マルティネスが、昨シーズンはルイス・キニョネスがそれぞれスピードで圧倒していた。逆に今シーズンは、つい最近までモンテレイの控えに甘んじていたパブロ・バレラ。全盛時の30%にも達していないと思われるが、それでも常に相手を圧倒するまでには到底至らない。
次に、前線にパスを供給する両ボランチ。1年前は特にアレハンドロ・カストロがディフェンスして奪ったボールをすぐに両サイドへ供給していたが、昨日DF陣のくだりで触れた通り今シーズンはセンターバックにコンバートされているため、アブラハム・ゴンザレスが主に担当している。スペイン1部リーグのエスパニョールで10番を張っていたベテランと言えばベテランだが、今のところ目立ったプレーは見せていないところを見るとメキシコリーグの試合に慣れるのに四苦八苦しているのかも知れない。
最後に、やはりエースの損失。2014-15シーズンに35出場12ゴール、2015-16シーズンに40試合出場15ゴール。数字では表せきれないくらいの存在感を示したこのストライカーをいとも簡単に手放すフロントもフロントだが、それならばそれで代わりになる補強をしているのであればともかく、今シーズン新加入した選手たちの中に少なくともそういう存在は見当たらない。
かと言って、先日オランダリーグから戻した下部組織出身選手であるサンティゴ・パラシオスにその代役を任せられるか?と言えば、それも無理な話。彼はオランダ1部リーグとはいっても、所属していたのは2部リーグからのレンタル契約。さらにメキシコへ帰国後すぐにTOPチームへ合流させるのか?と思いきや、まずはアンダー20のチームでスタメン起用して様子を見ている辺り、いきなりメキシコ1部リーグでバリバリ通用するハズもないというのが正直なところ。
これまで7節を終わって7戦3勝2敗2引き分けという成績は、戦ってきた相手の中で勝ったり引き分けた相手はいずれも順位表の下位チームばかりで、上位の2チームには完敗している上に勝った試合の内容も相手のオウンゴールであったりPKを外して自滅したりで、特に内容が良いとは言い切れない。この陣容でここまでの結果を収めているのは、たまたまラッキーであったと考えた方が良いだろう。これから対戦する上位のチームとの顔合わせも残っているし、パレンシア新監督もここから先が本当の意味での正念場だろう。