Pumas de la UNAM

メキシコサッカー1部リーグのクラブ・ウニベルシダ・ナシオナルを応援している日本人の備忘録

メキシコリーグ2020年ガーディアンズ リギージャ準決勝 裏話

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これまでも触れているように、今シーズンのチームは最近一番リーグ優勝に近付いた2015年前期ステージでリギージャ決勝戦まで進出した際のチームとは、根本的に違います。例のチームはボールポゼッションにせよ、得点数はもちろんそのチャンスを作る力も含めて今のチームより強力でした。だからこそ、アウェイゲームの対サントス・ラグーナ戦でも先制された後に追い付いて逆転するような試合が出来たわけです。

 

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そしてこの準決勝が行われる前に、レギュラーシーズン総合順位表の第2位になったのは運が良かったからか?というような議論がありました。事実今回の準決勝セカンドレグにおける全得点は、コーナーキックのようなセットプレーからのリバウンドやカルロス・ゴンザレスが決めた3点目のようなセンタリングのリバウンド。唯一流れの中から生まれた4点目も本来はサイドから仕掛けて相手を崩し切った形ではなく、ペナルティエリアの外から苦し紛れに放り込んだボールがたまたまファン・パブロ・ビゴンの前に通っただけです。

 

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準決勝ファーストレグのレビューにも書きましたが、自陣からのビルドアップをする際にボールコントロールが出来ず、些細なミスを相手に付け込まれて数分の間に大量失点をした酷い内容でした。4半世紀前からお付き合いのあるマリー叔母さんのお孫さん(長男の息子さん)は、3代にわたってPUMASを応援されております。彼はファーストレグを見終わった後、悔しくて一晩眠れなかったそうです。そして今回のセカンドレグを見終わった際には、嬉しすぎて思わず泣いてしまったそうです。そう考えると、我々大人以上に子供たちに与える影響はとても大きいんだなと再確認した次第です。

 

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今季レギュラーシーズンの際から、同じサポーター(ラ・プルス)仲間相手に「こんな内容のサッカーをしていては、とてもではないがリーグ優勝争いなんて有り得ない。」と散々クレームを付けていました。そしてファーストレグを終わって「だから、あんなに言っていただろう。自分は、もう二度とこんな酷い負け方をする試合は見たくないんだ。」と鬱憤をぶちまけました。かつてからの親友であるアントニオは、セカンドレグが終わった後に「お前の口を塞ぐぐらい、素晴らしいサッカーをする他のチームを応援したほうが良いんじゃないか?」と逆に言われてしまった始末です。

 

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今働いている会社の加工現場にいる若い子は、今回の準決勝が始まる前に1.2リットルのビール瓶1本を賭けようじゃないか?と言ってきたので、ハナから結果を決めつけてその子に奢るつもりでその賭けに乗って、ファーストレグが終わった際に支払いました。しかし今日、彼は「俺の負けだ。」と言って、払った倍のお金を返してきました。そこで彼が言ったのは「俺はおじいちゃんの代から、クルス・アスルを応援しているんだ。」というセリフでした。クルス・アスルというチームは、最後にリーグ優勝したのが今から23年前の1997年後期ステージで、そこからレギュラーシーズンは順風満帆に勝つのですが、いざリギージャになるとそれまでと全く違ったサッカーをして今に至ります。

 

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要するに何を言いたいかというと、メキシコ人にとってサッカーとは小さい頃からお父さんらに連れられてスタジアムで応援して、その子供がさらにその次の代へと受け継がれていくものであるということです。どこのチームがいつも強いからといってミーハーな感覚でコロコロ応援するチームを変えるようなスタンスではなく、勝とうが負けようが1つのチームをずっと応援し続ける。だから仕事の同僚から「お前には、自分の応援するチームに対する信念がないのか?」と問い掛けられるわけです。自分自身に自問自答してみると「いや、決してそんなことはない。」という答えが返ってくるのですが、一番冒頭に書いたように今のチームに対するそれは過去のものと異質なものだったんだな。と改めて気付かされました。

 

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こうして、自分が夢にまで見たリギージャの決勝の舞台にPUMASが立つことになりました。レギュラーシーズンに唯一負けた試合が、今回対戦するクラブ・レオンです。その試合はアウェイゲームで、途中正ゴールキーパー:アルフレード・タラベラがペナルティキックを献上し退場処分。そこからさらに数的優位を利用され、ダメ押し点を喫して負けた試合です。これまでにも何度か触れてきましたが、クラブ・レオンは現在のメキシコサッカー1部リーグで最も良いサッカーをするクラブです。ボールポゼッションを持って、短いパスを何度も繋いで相手を崩してくる。それは今シーズンに限らず、ここ数年イグナシオ・アンブリス現監督の政権になって変わらないスタイルを貫いています。

 

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思い返せば半年前に、レギュラーシーズン開幕前に前ミッチェル監督が突然の辞任。そこから開幕戦キックオフの数日前に、やっと下部組織育成担当であったリリーニ監督白羽の矢が立ち、誰もがそこからレギュラーシーズンで総合順位表の第2位になるとは、またリギージャの決勝まで進出するとは予想すらできませんでした。大変残念ながらスタジアムへ行って応援することは叶いませんが、ここまで来たらアンドレス・リリーニ監督が目指すサッカーがどこまで通用するのか?を見極めてみたいと思います。そしてそれはここまで戦ってきて、リギージャの決勝まで辿り着いたという結果が全てを物語っているような気がします。