2年前にアンドレス・リリーニ監督の采配という記事を書いて以来、PUMASのフォーメーションに関する内容に触れてきませんでしたが、今シーズンはこれまで以上にCONCACAFチャンピオンズリーグとの兼ね合いであったり、負傷者や試合における退場者が多かったので、改めてそれらの流れを整理しておきたいと思います。
先日自身のクラブとの契約を更新して、さらに来年いっぱいまで指揮を執ることになり、改めて心機一転して来シーズンへ臨むとのことで、これまでに昨シーズンまで在籍していた選手たちが契約更新をしなかったり、また今後補強選手たちの情報が上がってくるでしょう。これから注視していきたいと思います。
1月20日 第1節 対デポルティーボ・トルーカ戦(5−0)ホームゲーム
開幕戦のフォーメーションは、アンドレス・リリーニ采配の基本形である、4−4−2。アルフレード・タラベラ、ホセ・リカルド・ガリンド(レギュラーのニコラス・フレイレが内側腓腹筋の張りのため欠場)、アルトゥーロ・オルティス、エフライン・ベラルデ、アラン・モソ、ファビオ・アルバレス(後半37分、ヘロニモ・ロドリゲス)、レオネル・ロペス、セバスチャン・サウセド(後半23分、ホルヘ・ルバルカバ)、マルコ・ガルシア(後半31分、イゴール・メリタオ)、ジオゴ・デ・オリヴェイラ(レギュラーのファン・ディネンノは、昨シーズンプレーオフで退場処分のため1試合欠場→後半38分、エマヌエル・モンテハノ)、ジョゼ・ロジェーリオ(後半23分、ワシントン・コロソ)。
このフォーメーションの長所は、中盤のラインに4人がフラットに並ぶため、2対1の数的優位が作りやすい、フラットなラインが2列並ぶことで距離感が良いので、カウンターアタックの対処がしやすい、攻撃の際サイドにサイドバックがいないのでスペースが出来て、2トップがサイドに流れることが出来るという点が挙げられます。攻撃の戦術としては、サイドアタックで中央に人数をかけているわけではないので、オフェンス時はサイドハーフ、サイドバックのオーバーラップによりサイドを攻略し、クロスやセンタリングでフォワードの得点をアシストする形。ただし以前から今のチームにはそのサイドバックがアラン・モソ1人のみなので、前線のフォワードが常に孤立するというのが現状。
またキーポイントとなるポジションはセンターハーフで、攻撃時・守備時ともにバランスを意識したポジショニングを取らなければなりません。攻撃時はサイドアタックを引き出すためのパスや、ポジションチェンジ、カウンター対策のためのポジションバランスを、守備時には中央を破られないように手堅くプレーしなければならず、センターバックとの連携、サイドのケアを求められることになります。開幕戦のスターティング選手で言うと、ファビオ・アルバレスとレオネル・ロペスがその該当選手となります。
逆にこのフォーメーションの短所は、特に両サイドハーフの高い運動量が必要となる点。センターハーフとセンターバックの間のエリアに相手フォワードによってポジションを取られた場合には、細心の注意を払わなければならないし、センターハーフが最後までマークするのか、センターバックが常に見ておくのか、明確にしなければなりません。開幕戦のスターティング選手で言うと、マルコ・ガルシアとセバスチャン・サウセドがそれに該当。
第2節のフォーメーションは、3−5−2。アルフレード・タラベラ、ホセ・リカルド・ガリンドレギュラーのニコラス・フレイレが内側腓腹筋の張りのため欠場)、アルトゥーロ・オルティス、エフライン・ベラルデ(前半43分、ヘロニモ・ロドリゲス)、アラン・モソ(後半20分レッドカード退場処分→次節出場停止)、ファビオ・アルバレス(試合前の診断では、左足底腱膜炎で全治1週間だったが出場)、レオネル・ロペス、セバスチャン・サウセド(後半24分、ワシントン・コロソ)、マルコ・ガルシア、ジオゴ・デ・オリヴェイラ(レギュラーのファン・ディネンノは、内側側副靭帯損傷で全治1週間のため欠場)。ジョゼ・ロジェーリオ(後半30分、ホルヘ・ルバルカバ)。
ただでさえ激しいサッカーが毎試合繰り広げられるメキシコサッカー1部リーグなのに、第2節にして早くも週2試合という過密日程、この試合でゴラッソを決めたマルコ・ガルシアは、試合途中で右脚腓骨を骨折。交代枠を使い切っていた為、途中交代出来ないまま試合終了までピッチにうずくまっているという惨事になりました。もちろん、この後シーズン後半までリハビリに専念することになります。
第3節のフォーメーションは、再び4−4−2へ。
アルフレード・タラベラ、ニコラス・フレイレ、アルトゥーロ・オルティス、ヘロニモ・ロドリゲス(前節でアラン・モソが退場処分のため、1試合出場停止)、ホセ・リカルド・ガリンド、レオネル・ロペス、イゴール・メリタオ、セバスチャン・サウセド(後半18分、クリスティアン・バトッキオ)、ファビオ・アルバレス、ジオゴ・デ・オリヴェイラ
(後半41分、オマル・イスラス)、ジョゼ・ロジェーリオ(後半17分、ファン・ディネンノ)。
個人的にも、試合内容的にも今シーズンのベストゲーム。それを示す動画が無いのが非常に残念ですが、記憶では前半の20分前後にハーフライン付近でレオネル・ロペス、ファビオ・アルバレスそしてセバスチャン・サウセドの間で交わされた全てダイレクトタッチのトライアングルパス。こんなプレーはここ数シーズン見たことが無かったので、正直驚きましたし、結果的にこの10数分後にヘロニモ・ロドリゲスが先制点を挙げるのですが、試合展開を考えるとあと数点は楽に挙げられるだろうと感じました。
ただ相手は毎シーズン、リギージャ(プレーオフ)の常連であり、ここ10年で最もリーグ優勝を飾っているUANLティグレス。そして率いるのは名将:ミゲル・エレラだけに、さすがに後半に入ってから4枚の選手交代をしてしっかりと軌道修正してきました。そして今シーズンのリーグ得点王:アンドレ・ピエール・ジニャクが、最後は逆転弾を決めてアウェーゲームなのに勝ち点3を挙げたのでした。
第4節のフォーメーションは、4−3−3。
アルフレード・タラベラ、ニコラス・フレイレ、アルトゥーロ・オルティス、アラン・モソ、ファビオ・アルバレス、レオネル・ロペス(後半15分、クリスティアン・バトッキオ)、イゴール・メリタオ(後半35分、オマル・イスラス)、ファン・ディネンノ(後半34分、ワシントン・コロソ)、ジオゴ・デ・オリヴェイラ(後半15分、ホルヘ・ルバルカバ)、ジョゼ・ロジェーリオ。特にスターティングメンバーの選手で怪我であったり、前節に退場処分を受けた者がいないのにこれまでの4−4−2から4−3−3へ変えたのは、
試合後の記者会見でアンドレス・リリーニ監督が語ったように、試してみたけれども機能しなかったもの。
全体の陣形をコンパクトに保てることができるので、非常にバランスの良いフォーメーションです。またボールを失っても相手の最終ラインに対して前線から厚みのあるプレスをかけることが可能です。攻撃に人数をかけられると同時に、相手の最終ラインからのビルドアップに対して前線からプレスをかけやすいですが、守備時にサイドに引っ張られるとバランスが崩れやすいし、全体の連動が遅れるとスペースやライン間が空きやすいというデメリットもあります。
平日のトレーニングでも何回も繰り返し試したきた結果が出なかったもので、シーズン序盤で勝ち点もある程度確保している余裕があったんでしょうが、最終的に1点差で負けたこととその後のレペチャへ(敗者復活戦)進出して敗退してしまったことを鑑みると、勿体無い試合であったことは間違いないところでしょう。本来であればレペチャへからではなく、ダイレクトにリギージャ(プレーオフ)へ進出した方が良いのは当たり前ですし、アンドレス・リリーニ監督も記者会見で常に目標はリギージャ進出と語っていましたから。
第5節も、前節に引き続き4−3−3のフォーメーション。
アルフレード・タラベラ、ニコラス・フレイレ、アルトゥーロ・オルティス、ヘロニモ・ロドリゲス、アラン・モソ(後半37分、レッドカードで一発退場処分→次節出場停止)、イゴール・メリタオ、レオネル・ロペス、ファビオ・アルバレス(後半43分、ホセ・リカルド・ガリンド)、セバスチャン・サウセド(後半20分、ワシントン・コロソ)、ジオゴ・デ・オリヴェイラ、ジョゼ・ロジェーリオ(後半20分、ファン・ディネンノ)。
この後、翌週の平日にでCONCACAF(北中米カリブ海地域)チャンピオンズリーグ・ラウンド16の1stレグで対デポルティーボ・サプリサ戦(アウェーゲーム)を控え、さらに週末には昨シーズンのリーグ王者:CFアトラスを同じくアウェーゲームが組まれている関係か、チーム得点王のファン・ディネンノをベンチに温存。
ここでも第3節に引き続き、中盤のダイレクトパスから流れるようなワンツーで最後はジョゼ・ロジェーリオが同点弾を決めました。アルトゥーロ・オルティスによるビルドアップから左サイドのヘロニモ・ロドリゲスへ一旦叩いて、セバスチャン・サウセドを経由してから、ファビオ・アルバレスとのワンツーパスから、最後はペナルティーエリア右サイドでフリーになっていたジョゼ・ロジェーリオが押し込んだもの。これは動画が下記リンク先にありますが、PUMASにとっての生命線はこのプレーに集約されているように思います。
CONCACAFチャンピオンズリーグ・ラウンド16の1stレグもまた、リーグ戦同様の4−3−3フォーメーション。アルフレード・タラベラ、ニコラス・フレイレ、アルトゥーロ・オルティス、エフライン・ベラルデ、アラン・モソ、ホセ・リカルド・ガリンド、クリスティアン・バトッキオ(後半13分、ファビオ・アルバレス)、レオネル・ロペス(後半32分、ヘロニモ・ロドリゲス)、セバスチャン・サウセド、ファン・ディネンノ、セバスチャン・サウセド(後半13分、ジョゼ・ロジェーリオ)、ワシントン・コロソ(後半32分、イゴール・メリタオ)。
このCONCACAFチャンピオンズリーグはチームのエース:ファン・ディネンノにとって、本領を発揮したトーナメントになりました。決めたゴールは計9得点でリーグ得点王、まさにミスターCONCACAFチャンピオンズリーグの名に相応しい活躍ぶりでした。ただアウェーゲームで常に先行したスコアのアドバンテージを最後まで保ち切れなかったことについては、今後の課題を残した形。
第6節のフォーメーションは、5−3−2。
アルフレード・タラベラ、ニコラス・フレイレ(後半19分、ヘスス・リバス)、アルトゥーロ・オルティス、エフライン・ベラルデ、ヘロニモ・ロドリゲス、ホセ・リカルド・ガリンド、イゴール・メリタオ、レオネル・ロペス(後半41分、サンティアゴ・トリゴス)、セバスチャン・サウセド(後半20分、ジオゴ・デ・オリヴェイラ)、ファン・ディネンノ(後半41分、ワシントン・コロソ)、ジョゼ・ロジェーリオ(後半30分、オマル・イスラス)。なおファビオ・アルバレスは腰痛のため、全治1週間ということで欠場。
堅守速攻型で全体をコンパクトに保つことができ、非常にバランスに優れており、攻守の中心であるセントラルハーフの攻守の貢献度によって試合の質が変化し、スイーパー(このチームの場合は、ニコラス・フレイレ)を配置することで守備時の最終局面では数的優位が作りやすく、相手の攻撃の芽を摘み取ることが出来ます。
攻撃面は中盤のパフォーマンスが低いと攻撃にバリエーションが無く単調な攻撃になりがちで、ワイドな攻撃を仕掛けるにはサイドバックのオーバーラップが必要不可欠であり、中盤を追い越す動きで連続的なサイド攻撃が可能。ツートップはどちらもフィニッシャーとしての役割はもちろんのこと、引いて2列目から飛び込んでくるためのスペースも作り出すもの。
また守備面はゾーンディフェンスを一貫とし、役割分担がはっきりとし効率的な守備が行えますが、マークの受け渡しの連携が非常に重要で、マークのズレやギャップが生じてしまったときやサイドバックが上がりきってしまった後の守備時は、スイーパーがカバーリングを行い、相手にボールを奪われた時に素早く自陣に戻り守備陣形を整える守備が適しており、ボールを奪ったら攻守の素早い切り替えでカウンター攻撃に転じることが可能です。
2月23日 CONCACAFチャンピオンズリーグ ラウンド16 2ndレグ 対デポルティーボ・サプリサ戦(4−1)ホームゲーム
CONCACAFチャンピオンズリーグ・ラウンド16の2ndレグ になって、ようやく本来の4−4−2のフォーメーションへ。フリオ・ゴンザレス(レギュラーのアルフレード・タラベラが右肩のリウマチ性関節炎で、全治1週間のため欠場)、ホセ・リカルド・ガリンド(レギュラーのニコラス・フレイレが左ハムストリング筋損傷で、全治2週間のため欠場)、アルトゥーロ・オルティス、ヘロニモ・ロドリゲス、アラン・モソ、レオネル・ロペス(後半35分、サンティアゴ・トリゴス)、ファビオ・アルバレス(後半41分、ホセ・カイセド)、ワシントン・コロソ、オマル・イスラス、ファン・ディネンノ(後半42分、ジョゼ・ロジェーリオ)、ジオゴ・デ・オリヴェイラ(後半10分、イゴール・メリタオ、後半35分、セバスチャン・サウセド)
翌週に対クラブ・アメリカ戦のメキシコシティダービーを控え、先制点が欲しかった展開でアルトゥーロ・オルティスがセットプレーから得意のヘディングシュート。またチームの守護神に代わって先発出場した、ゴールキーパー:フリオ・ゴンザレスが安定したパフォーマンスでゴールマウスを守り、またミスターCONCACAFチャンピオンズのファン・ディネンノの2得点もあって、難なくチャンピオンズリーグ・ラウンド16をパスしました。
2月26日 第7節 対クラブ・アメリカ戦(0−0)ホームゲーム
この試合のフォーメーションも、引き続き4−4−2。アルフレード・タラベラ、ホセ・リカルド・ガリンド、アルトゥーロ・オルティス、エフライン・ベラルデ、アラン・モソ、イゴール・メリタオ、レオネル・ロペス(後半24分、ジオゴ・デ・オリヴェイラ 後半33、46分警告2枚でレッドカード)、ヘロニモ・ロドリゲス(前半29分、セバスチャン・サウセド)、ファビオ・アルバレス(後半41分、ニコラス・フレイレ)、ファン・ディネンノ(後半41分、オマル・イスラス)、ジョゼ・ロジェーリオ(後半24分、ワシントン・コロソ)。
今シーズン前半の締め括りは、対クラブ・アメリカ戦のメキシコシティダービーマッチ。ただ相手チームは今シーズン絶不調で、総合順位表のブービー賞の第17位。アンドレス・リリーニ監督はこの試合を絶対にモノにしたかったので、後半30分にジオゴ・デ・オリヴェイラを投入。しかし出場して10分も経過しないうちに、相手キーパーへのチャージで1枚目の警告、さらにその3分後にペナルティーエリア内でオーバーヘッドキックを試みたところ、相手ディフェンダーに当たったしまい2枚目の警告を立て続けにもらい、退場処分となってしまいました。
後半41分、ファン・ディネンノを下げてオマール・イスラスを、ファビオ・アルバレスを下げてニコラス・フレイレを投入して、守備固めを図りました。最後の数分でクラブ・アメリカは勝ち点3を狙って複数の選手交代で攻勢に出ましたが、結局スコアレスドローに。